彩りに　胸躍らせる　神の旅

色づいた渓谷を、私たちを乗せた観光バスは、進んでいく。
考えてみれば、子供たちが定年記念にとプレゼントしてくれたこの旅行が、私たち夫婦にとって初めての旅行であり、もしかして、妻と行く最後の旅行になるかもしれない。



幼き日の　無邪気な笑顔　柿落葉

妻の笑顔をこんなに見たのは、初めてである。色とりどりの木々の下で子供のようにドングリを集める妻を見ながら、心の中で「本当に今まで苦労をかけたな。ごめんな。ごめんな。・・・ありがとう。ありがとう。」とひたすら手を合わせる・・・。



お火焚に　平平凡凡　幸を知る

お火焚きの火に、忙しく子供を送り出す姿や掃除・洗濯に追われている姿、新聞を読む傍ら、常に動きまわっている妻の姿。
この当たり前の光景がどれだけ自分にとって大切だったのか・・・。



夕焼け空　ほほ笑む妻に　冬紅葉

「あなた！こんなにきれいな夕日を見たのはじめて！」
私は、こんなにまではしゃぐ妻を見ながら、心の中で誓った。
ただ、私や子供たちだけの為だけに人生を捧げてきた妻と、
余命三カ月を宣告された残りわずかな時間を一緒にすごそうと。


「あなた、来年もここに来ましょうね！」

「約束よ！」